矯正歯科治療は、親から子どもへのギフト!
年代ごとで知っておきたい歯並びのこと
ご両親に顔立ちや体型が似るように、歯の大きさやあごの形も遺伝します。
また、生まれてからの環境や習癖でも歯ならびはおおきく変わります。
片方にばかり向いて寝かせたり、おしゃぶりを全く離さないなどの癖は、少しづつやめる方向へもって行きましょう。2歳を過ぎてからのおしゃぶりの常用、ベロを突き出すなどの習癖、乳歯の早期喪失、歯の外傷などは歯並びを悪くする環境要因となります。
環境要因は、お母さんによる予防が可能なものが多く、虫歯にもならないような食事や歯磨きの習慣づけも大切です。3歳くらいまでは、かみ合わせに少し異常があっても発育とともに改善することが多いので心配な場合は、矯正歯科医へ受診し定期的な観察をつづけて治療が必要になる場合のタイミングをはかります。
指しゃぶりやおしゃぶりの長期使用は、上のあごや歯がでてくる上顎前突や、口が閉じても前歯の上下に隙間を作ってしまう開咬などのかみ合わせの異常の原因になります。
これらの癖にどう対処すればよいかお母さんも迷われると思います。指しゃぶりは、生理的な行為でもあるため無理にやめさせないほうがよいという考え方もあります。また咬み合わせも3歳くらいまでに癖がやめられれば発育とともに改善することが多いようです。
これらをふまえて、親があたえるおしゃぶりは3歳までに使用を中止し、指しゃぶりは3~4歳まで続くようなら対応が必要と考えていただくのが良いと思います。3歳をこえる時期になるとかみ合わせもしっかりとしていき、明らかにかみ合わせに異常がある場合は矯正歯科医へ相談されることをお勧めします。
この頃は、頬杖をつくようになったり軟らかい物をこのんで食べるようになったりかみ合わせによくない癖が目立つようになります。虫歯予防も怠ると取り返しのつかないかみ合わせへと成長してゆく可能性もあります。両側の糸切り歯がそろう9歳~10歳になると将来のあごの成長予測も可能となります。この時期に明らかな異常がみられたり学校検診などで歯並びの異常が指摘された場合は、早めに矯正歯科治療を受けましょう。その際の医師を選ぶポイントは、成長予測について説明ができる医師を選びましょう。一度、矯正治療が完了したあとに思春期以降に修正治療が必要になってくるケースもでてきますのでその後のケアや費用の面も充分に説明を受けましょう。
永久歯がはえ揃ってくるのもこの時期です。日常の生活においても何かとストレスが出やすくなります。矯正歯科治療は、歯に多くの器具をつけて歯を動かします。永久歯の矯正は、歯を動かすのに標準的な治療で2年間かかります。受験に差し掛かる時期をなるべく避けたりするには、中学高校であれば入学してすぐの治療が開始できるように入学前の春休みくらいには、受診をされることをお勧めします。
矯正歯科医師の紹介
熊谷久実子
大阪歯科大学卒業
京都府立医科大学付属病院歯科
中西矯正歯科勤務を経て平成18年5月よりくまがい歯科クリニック副院長。
くまがい歯科クリニックでは矯正歯科専門外来を担当し、3歳児から成人にいたるまで幅広い患者ニーズに対応した治療を心がけている。二児の母でもある。
日本成人矯正歯科学会会員
歯並びの矯正を希望する方で、もっとも多い理由は“見た目を良くしたい”と言うものです。 もちろん、見た目を良くすることはとても大事なことですが、歯並びが悪いことはそれだけの 問題ではありません。その理由をいくつかご説明致します。
出っ歯である
(口を閉じる時、歯が出てる又は咬んだ時下唇にあたる)
八重歯がある
反対咬合(受け口)である
前歯がすきっ歯である
(2mm 以上あいている)
乱杭歯である
(歯が出たり入ったりしている)
「現代人は、足が長く、いかり肩で顔の小さいひとが多い。」
「目が大きく、鼻が高く、頬骨や顎の骨が角張っていない。」
全てのひとにはあてはまりませんが、これが現代人の体格の特徴であると、私は考えています。
また顎の骨が小さく、かみ合わせが浅かったり、深かったり、左右の対称性にズレが大きかったりで、これらの咬合異常は、現代人の文化的生活が生んだ進化の過程なのかもしれません。
子どもへの不正咬合への対応は、矯正歯科を標榜する歯科医師によって 同一ではありません。ある学派の先生たちは、永久歯が生え揃うのを待って一気に歯列を改善することを推奨します。
一方で、口腔や顔面の筋機能の改善を重視する学派では、乳歯列完成期から混合歯列期(乳歯と永久歯が混在する時期)に矯正治療を始め、永久歯列期になって必要があれば、もう一度矯正治療を行う2期的治療を推奨します。
私の考えは、2期的治療を支持しています。
その理由は、口と顔の機能の問題は、子どもの発育段階で生じるので、早期に発見して適切な指導と処置をもって発育の軌道を修正することに意味があると考えるからです。
矯正歯科医への関わり方によっては、顎や顔面の成長が大きく左右されることさえあります。医学的な考えにブレのない矯正歯科医からしっかり説明を受けて、正しい治療を受けられることをお勧めします。
一期治療は、主に顎の成長の基礎的な部分を正常に導いたり、歯の萌出の異常を最小限に抑えたりする治療で、二期治療は、 一期治療で残された問題点を歯の移動で解決し、より完璧なかみ合わせを作る治療を指します。
一期治療で問題点が排除でき、完全に正常な発育の軌道へ乗った場合は、二期治療が必要でなくなる場合もあります。
成長期での矯正治療の機会がなかった場合は、成人矯正治療の適応となります。
最小限の治療介入
乳歯列完成期から永久歯列完成期への移行期のなかで、正常な発育軌道を逸脱する傾向にある場合で、自然治癒の見込みがないのと判断された場合にのみ治療介入を行います。指吸い、爪かみや頬杖などの悪習癖の除去で改善できる可能性がある場合は、まずは習癖の改善を試み、矯正器具の装着は見合わせます。
また、2期治療が確実に必要となる特定のケースでは、成長の終了を待っての治療を勧めることもあります。
一期治療に否定的な意見もある
2段階に分ける治療よりも、思春期成長期に1回で済ませるほうが効率的であるという考えもあり、2段階に分ける治療に否定的な意見をもつ歯科医師がいることも知っておく必要があります。
しかし、画一的に否定するのではなく、ケースごとに治療のメリットを考えて保護者と考えるのが妥当であると私は考えています。
一期治療のメリットは大きい
私は、一期治療にメリットは大きいと考えています。それは、成人の患者さんのなかには、「子どもの頃に治療していればこんなことにならなかったのに」と思うケースに出会うことが少なくないからです。
一期治療には、子育ての要素が多く含まれています。治療では子ども一人ひとりに合った接し方が必要です。
矯正装置が全く苦にならない子どももいれば、とても負担に感じる子どももいます。
矯正治療が成功体験となって心身ともに自信を子どもに与えることができるようになればと常々考えています。
二期治療の開始は成長の完了を待つ
二期治療は、原則的に永久歯が生え揃うか成長が完了してから評価を行って開始します。
子どもたちの骨の成長年齢や歯牙の発育年齢も暦齢とは異なるので、一概に何歳で開始とは断言できません。
しかし開始時期が早すぎると治療期間が長引いたり、治療が完了したあとに下の顎の成長が続いたりすることがあるので注意を要しますし、治療完了後の経過観察も大変重要です。
本人の意思確認が最重要
中学生以降の治療開始となるので、思春期成長期の子どものメンタル面での考慮が必要です。
ただ学校検診で不正咬合が指摘されたからといって本人の意思が不確実なまま治療が進むと、治療に非協力になってしまったり、 不十分な手入れが原因で虫歯が多発して、治療前よりも悲惨な状態になることさえあります。
また二期治療には、歯に掛けるゴムを家庭で取り替えたり口唇や舌を正しい位置にするためのトレーニングが必要になることが多く、患者さん自身の協力度が、治療期間の長さと精度に反映されます。
やはり保護者主導ではなく、本人の良くなりたいという意思が、 治療成功の鍵になります。
まず歯科医師が口の中や顔の状態を診ます。
治療が必要かどうかの判断も行います。
心配事や費用のこと期間や装置について説明もします。
相談だけの場合は無料で行っています。
エックス線写真や口や顔写真も撮影します。
歯型もとって歯並びの状態をチェックします。検査といってもぜんぜん痛くないので安心してください。
精密検査の結果やセファロ分析と呼ばれるエックス線写真上の骨格の成長度の分析結果について説明します。
これからどういう治療が必要か、子どもでは、今後の成長の見通しについても説明します。
いよいよ治療の開始です。
でもその内容は人それぞれで、使う矯正装置も、歯やあごの状態によって異なります。
この時期は、一ヶ月に1回程度の通院を約2年くらい続けることになります。
治療が完了したら治した歯が安定するようにリテーナーという器具を装着します。
年に数回の受診で、問題点がないかチェックします。