歯がある方も入れ歯の方も
入院が決まったら、歯科を受診してください!
主治医に、全身状態に関する医療情報文書を作ってもらいそれを持参して歯科医師の診察をうけましょう。
口腔衛生が不良なまま入院すると、入院中に十分な口腔ケアが受けられない場合、肺炎などの合併症が発症しやすくなります。
放射線療法や化学療法によって口腔乾燥や口内炎が生じます。
口腔衛生状態が不良だと悪化しやすくなります。
医療上の都合で、義歯をはずされてしまうことが多いです。その後経管栄養になると、消化管が使われなくなり、栄養を摂取する機能が低下します。口腔衛生状態が不良な場合、経口摂取への移行が遅れ、ますます栄養状態が低下します。
歯のクリーングを行います
歯石や歯垢の除去により口腔衛生状態を改善することで、肺炎や術後感染などの合併症の発症リスクを下げることができます。
入れ歯の調整を行います
入れ歯が調整されていれば、退院後の普通食への移行も円滑に進み、消化管機能の低下による栄養状態の低下を防ぐことができます。
入院中の歯磨きや口腔ケアの方法を指導します
適切な歯磨きや口腔ケアの方法をしることで、術後の合併症の軽減が図れます。
口腔機能を維持する方法について事前に計画します
入院中に長期間経口摂取が制限されるが場合などに備えて、口腔機能を維持する方法について計画します。
Q がん治療によるお口のトラブルは、どんなものがありますか? |
A がん治療の方法によって、お口に出てくる症状は大きく異なります。手術では、傷口の感染と肺炎、抗がん剤治療では、口内炎、味覚の異常、歯や歯ぐきが原因の感染など、放射線治療では、口内炎、お口の乾燥、ムシ歯の増加などがあります。 |
手術
抗がん剤治療
放射線治療
Q がん治療前に歯科を受診するように言われました。なぜですか?どこの歯科を受診するのですか? |
A 治療前の歯科治療やお口のケアは、がん手術による傷口の感染や肺炎を予防します。また抗がん剤・放射線治療で起こるお口のトラブル(口内炎・お口の乾き等)を予防し症状を軽くします。これによりがん治療を苦痛を少なく、最後までおこなうことができます。 受診する歯科は、かかりつけの歯科医院が基本になります。かかりつけ歯科が無い場合は、病院が連携する歯科医院や、がんと歯科治療の講習会等に参加した歯科医院を受診すると安心でしょう。 |
治療前にかかりつけ歯科医院の受診
がん治療前のお口のチェック
・ 歯石の除去
・ ムシ歯の治療
・ 歯みがきの指導
がん治療の実施
治療後もかかりつけ歯科医院で継続治療
がん治療後のお口の衛生管理
・ 定期的な歯石除去
・ 一般的な歯科治療
Q がん治療前に歯科では、どんな処置を受けるのですか? |
A がん治療前に、歯科医院を受診して受ける処置は、大きく3つあります。 ①歯、歯ぐき、粘膜等、お口全体のチェック ②歯に付着する歯石を除去し歯面をきれいにする ③あなたのお口に合ったブラッシングの方法を歯科医師・歯科衛生士から説明を受ける |
1.お口のチェック
ムシ歯や歯周病など悪いところがないかチェックします。歯と周囲の組織を撮るX線撮影もあわせておこなわれます。
2.歯石除去や歯のクリーニング
歯石は歯科医院でしか取ることができません。歯石は歯についたままになっていると、細菌がたまりやすくなります。がん治療前に必ず取ってもらいましょう。
3.歯みがきの指導
人のお口は歯の並び方などそれぞれ違います。
あなたに合った歯みがき方法や治療前・治療中のケアの方法を教えてもらいましょう。
ムシ歯や歯周病がある場合、がん治療開始までの間にできる範囲で治療をおこなうようにしましょう。
Q がん治療前のお口のケアは、どのようにするのでしょうか? |
A ひとりひとりのお口の状態によって、ケアの方法は異なります。歯科医院で、歯科医師や歯科衛生士から指導された方法でおこなってください。ここでは、基本的な歯みがきと、うがいの方法を紹介します。 |
1.歯みがきがお口のケアの基本です。プラーク(細菌の塊)をハブラシで除去します。
方法
歯と歯ぐきの境目は汚れがたまりやすいところです。
ハブラシをあてたら、細かく振動させるように動かしましょう。
● 回数
毎食後が基本です。体調がすぐれない時は1日1回でもよいです。
● ハブラシの選び方
コンパクトなヘッドのものが奥歯まで届きやすく、粘膜にあたりません。
● 歯みがき剤
歯みがき剤は、粘膜に刺激が少ないものを選びます。
歯科衛生士は、患者さんのお口の状態に応じたお口のケア方法を指導してくれます。お口で困ったことがあれば相談してみてください。
2.うがいは、お口の乾燥を防ぎ、感染を予防すると考えられます。
方法
歯みがきあとに液をお口に含み、ぶくぶくと口全体に広げながら10~20 秒程おこないます。
● 回数
毎食後はもちろん、日中は2~3 時間おきにうがいをしてください。
● 洗口液の選び方
ノンアルコールのものが刺激が少ないのですが、体の成分と浸透圧が等張の洗口液、生理食塩水、市販の同等品がよいでしょう。
Q 義歯(入れ歯)を使っていますが、治療前・中に注意することはどんなことですか? |
A 義歯を使っている場合、がん治療前に歯科を受診して、義歯が粘膜に当たり傷ができてないか、痛いところがないかの確認と調整をしてもらいましょう。 がん治療中の義歯の使用は、がん治療によって対応が異なりますので、担当医や看護師さんに相談してください。 |
1.がん治療中の義歯の清掃と保管の方法
義歯には目には見えない無数の細菌が付着しています。毎日、寝る前に義歯をはずし、流水下で義歯用のブラシでごしごしこすり、汚れを落とします。最後に義歯保管用のケースに水をはり、その中に保管します。その際、義歯洗浄剤をあわせて使用すれば、細菌の繁殖を押さえることができます。
義歯洗浄剤を使うと、ブラシではとりきれない汚れや、臭いも取り除けます。
2.がん治療中の義歯の使用について
● 手術の場合
お口から食事をとる許可がでている場合、手術の前日まで使用できます。
● 抗がん剤や放射線の場合
お口の粘膜に赤みや痛みが出てきたら、担当医や看護師に相談してください。食事の時だけはめる、またはずっと外しておく、などの指示があります。外しておく場合は、正しい保管方法で保管してください。
Q お口やのどの手術を受ける予定ですが、治療の流れとお口のケアはどのようになるのですか? |
A お口やのどの手術では、手術前に歯科を受診して指導を受けた方法で、歯みがきやうがいを手術当日の朝まで継続します。手術後、看護師の指示でお口のケアが始まりますが、個別にケア方法の指導を受けなくてはなりません。 |
予想されるお口のトラブル・・・手術の傷口の感染、誤嚥による肺炎
お口の変化 | ケア方法 | |
手術前 手術日 一般 | 手術前は特に変化はありません。 自分でケアが一時的にできない時期 傷口の痛み、麻痺があり、水・食事が食べられません。 食事が開始される頃(手術後1週間くらい) お口・のどの傷が治り、食事ができるようになります。 飲みこむ際にむせないことを確認した後、食事が始まります。 | 開始前
|
Q 胃がんの手術を受けるのですが、口腔ケアは必要ですか? |
A 胃や大腸の手術は、肺炎の予防のためにお口のケアは必要です。特に高齢の患者さんの場合は、歯の清掃だけでなく、舌や頬の粘膜の清掃をスポンジブラシでおこなうようにしてください。 |
予想されるお口のトラブル・・・誤嚥による肺炎
お口の変化 | ケア方法 | |
手術前 手術日 一般 | 手術前は特に変化はありません。 自分でケアが一時的にできない時期 おなかの傷が落ち着くまで水・食事が食べられません。 食事が開始される頃(手術後1週間くらい) 胃や腸の傷が治り、食事ができるようになります。 重湯・おかゆから始まります。お口の変化はほとんどありません。良く噛んでゆっくり食べるようにします。 | 開始前
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Q お口やのどに放射線治療を受ける予定ですが、どのような障害が残りますか? |
A 放射線治療がお口やのどの周辺に行われると、唾液を出す細胞がダメージを受けて、唾液の出にくい状態になります。お口が乾いた状態が長く続くと、ムシ歯になるリスクも高くなるので治療後も定期的な歯科受診が必要です。 |
お口の乾きの対処法
こまめにうがいや水分補給をして、お口の中をいつも湿らせておきましょう。市販の保湿剤はスプレー式、ジェル型、洗口液などの種類があり、お水よりもお口の中を長く湿らせることができます。
また、担当医の判断で塩酸ピロカルピンという唾液腺を刺激して唾液を出すお薬(保険適用)が処方されることもあります。
ご自身に合った保湿の方法を見つけましょう。
迷ったときは歯科医師、歯科衛生士にご相談ください。
定期的な歯科受診
放射線治療によってお口が乾燥した状態が長く続くと、ムシ歯になるリスクが高くなります。
ムシ歯の予防には歯科医院でフッ化物を歯に塗ってもらうことが有効です。治療の終了後も定期的に歯科医院を受診し、お口を清潔に保ちましょう。