繰り返しの治療が歯をダメにする。それが、現在の日本の歯科医療の制度です。
歯科医師は、日々懸命に医療保険の制度のなかで治療をしていますがこれが現実です。また健康保険医は、健康保険以外の療法について積極的に勧めてはならないという規則があります。
ですから歯科医師は、インプラント治療についての福音を知りつつ積極的に勧めていません。私自身も、患者様が選択されない限り、詳しい説明は行っていません。
医療保険の範囲内でも丁寧で良心的な治療を心がけていますが、もしこのHPを読まれた患者様でインプラント治療を希望される場合は、その旨を担当歯科医師へお申し出ください。
インプラント治療を考える時、それは両隣の歯が健全な場合で、
その真ん中の歯を1本失った時です。
では、なぜ両隣の歯が健全でブリッジで対応可能なケースに
インプラント治療が必要なのでしょうか?
従来のブリッジという方法だと、何の罪もない隣どうしの歯を大きく削って、歯をいれます。
この方法は、半永久的な治療と思われがちですが、
統計的に8年で5割のケースでダメになっています。
周囲の歯が健康な場合
両サイドの歯を削ることなく治療を終えることができるのがインプラント治療の最大の利点です。
インプラント治療は、歯を一本失った時に最大の効果を発揮します。
さらに、隣の歯が悪くなるとやがては、入れ歯になり、
入れ歯のバネがかかった歯がまた虫歯になります。
また、バネをかけた歯の8割が5年以内に何らかのトラブルに見舞われています。
デンタルインプラントは、
究極の予防的治療なのです。
義歯の不調を改善するためにインプラントを利用する場合、インプラントに歯を立ち上げて固定式で仕上げる方法と取りはずし式の義歯の快適性をアップさせるために義歯とインプラントのコンビネーションで仕上げる方法の2通りがあります。
私自身は、義歯とのコンビネーションでの治療が患者様の手入れのしやすさ、快適性や経済性などの要求に合いやすいと考えています。歯の残っている数や、顎の骨の形態によって治療の難易度が変わります。
治療のゴールは、最長でも2年以内で仕上がる計画をたてます。
それより長期になる可能性がでる場合に備え、計画の修正案(shadow plan)も治療着手時に作り、2年以内でなるべく仕上げる努力をします。なぜ2年以内という期間にこだわるかといいますと、それ以上の長期の治療計画は絵に描いた餅になってしまう可能性が高いからです。
次に代表的な治療例をあげます。
歯を全て失ってしまった場合
歯科インプラントと義歯の
コンビネーション
固定式
従来型の総義歯
インプラントを2本から4本埋入し
インプラント体に磁石を装着。
上の顎に8本のインプラント体を埋入。
このタイプの義歯は、顎の骨が義歯から直接圧迫をうけて1年に数ミリずつ顎の骨が痩せてきます。
これが義歯がすぐにゆるくなってくる
最大の理由です。
最終的な歯の完成まで約5ヶ月
最終的な歯の完成まで約1年~2年
義歯の大きさを従来の3分の1の面積にし、スリム化できます。さらに義歯が簡単に落ちてこなくなります。
費用の目安:120万円~150万円
埋入したインプラントに歯の頭を立ち上げ10歯程度の固定式の歯を装着。
費用の目安:350万円~450万円
※骨増生の必要性や歯の本数によって費用が前後します。
当院では、ドリルをなるべく使わず、骨もほとんど削ることなくインプラントを埋入する手術、術式を採用しています。手術時間は、従来より少し長くなりますが、この手術術式の確立で1歯から2歯埋入のケースでは、骨増生手術がほとんど要らなくなりました。
さらに、骨増生手術に伴うインプラント体と骨との接合不良の頻度を減らし、再手術の必要性が格段に減少しました。
1 GBR
骨の委縮した部分へ、周りから骨を採集し、骨を増大します。
これによって、骨を増大し、インプラントを最適なポジションへ埋入できます。
抜歯後6週間での早期埋入や、抜歯と同時の即時埋入には、この方法が必要です。
手術術式の改良により、我々のクリニックではほとんど行わなくなりました。
2 サイナスリフト
上顎大臼歯(上あごの奥歯)の部分は、垂直的に骨の量が少ない場合があります。
その際、上顎洞という、頬の中(内側)の空洞に骨を作ることによって、インプラントを埋入するスペースを確保します。上下的なの骨の厚みが、X線やCT画像で計測した上で5ミリに満たない場合は、この術式を採用します。
超音波を併用した、手術機器(ピエゾサージェリー)を使います。
3 ソケットリフト
サイナスリフト同様、上顎大臼歯(上あごの奥歯)の部分に、インプラントのスペースを確保する方法です。
上下的な骨の厚みが、X線やCT画像で計測した上で5ミリ以上あるケースで、あと数ミリの骨造成を行いたい場合にこの術式を採用します。サイナスリフトに比べ手術は簡便ですが、術後の評価が難しいのと、文献的なエビデンスに乏しいといった側面はあります。
超音波を併用した、手術機器(ピエゾサージェリー)を使います。
4 遊離歯肉結合織移植術
インプラント周囲の歯肉(歯ぐき)は、天然歯の周りの歯肉(歯ぐき)に比べると、やや弱いと考えられています。インプラント埋入時には、健康なしっかりした歯肉でインプラント周囲をしっかり囲んでおく必要があります。
通常は、上あごの内側の厚い歯肉をインプラント周囲に移植します。
5 その他
インプラントに関連する手術は他にも、たくさんあります。必要により、オプションとして使用しますが、必ず治療計画の説明の段階で患者様にお知らせし、同意を得てから行います。
メンブレンという膜や、人工骨を使用する場合もあります。使用する材料についてもいろいろな種類がありますが、日本の薬事法に適合した安全な製品のみを選択いたしますのでご安心ください。
当院では、世界最大のシェアを誇るノーベルバイオケア社製ブロ-ネマルクインプラントを採用しています。
生体親和性の高いバイオマテリアル
TiUniteR(タイユナイトR)はブローネマルクインプラントの独特な表面性状です。
電気分解の過程でインプラントの酸化チタン層に含まれるガスが放出されて孔が形成され、表面積が広がります。
さらに、その無数の孔に硬組織と軟組織が絡み合うことによって、骨とチタンが生物学的および力学的に結合する自然な構造が形成されます。タイユナイトRと呼ばれるこの表面は血中タンパク質を吸着し、血小板を活性化させて、フィブリンを維持するため、骨芽細胞を誘導します。
このような環境のもと、速やかにインプラントの表面およびその孔の中へと骨が短期間で形成されます。
同様に、付着上皮がヘミデスモゾームを介して表面に付着することにより、ソフトティシュ・インテグレーションをもたらします。
当院には、歯科用X線CTの専用室を設けております。
インプラント手術を行う患者様へ必要に応じてCT検査を実施します。X線CTによる検査は、特に上アゴの骨が薄い方の術前評価に、威力を発揮します。
歯科治療は、小手術の連続です。虫歯は、感染している病巣を切除している訳ですし、インプラントはもちろん手術を伴います。必要に応じて術前に血圧測定や血液検査を行います。
この術前検査で未治療の糖尿病や高血圧が判明することもあります。内科的治療を優先すべき場合は迷わず手術を延期します。重篤な疾患が見つかった場合は、インプラント以外の治療法への変更をお願いすることもあります。
インプラント治療の技術革新は、目覚ましいものがあります。私自身の臨床経験から申しますと、最新技術の全てがすばらしいものでは決してないということです。
とくにデンタルインプラントは、顎の骨の扱いを大事にし、人間の自然治癒力を引き出しながら完成させていくものと考えています。バイオマテリアルを過信せず、骨に愛護的な力を加えることによって、骨そのものに加えられた力に自ら反発しながら治癒してゆく。私は、常にこのようなイメージでインプラント臨床に取り組んでおります。