小児歯科

当院でのお子様の治療の流れ

当院では、お子様には「健康な永久歯の完成」を目指し治療にあたっていますので、今後お子様と長い付き合いが出来ること を願っています。ですから小さなお子様には歯科に対して恐怖心のない様治療にあたっています。また、現状の虫歯の治療と共に「健康な永久歯列」のために予防歯科、矯正歯科を行っています。 以上の事により、歯科医師、歯科衛生士の各々専門的な処置として分担し治療を進めさせて頂きます。

当院でのお子様の治療の流れ


こども用フッ素入り歯磨き剤の今日の見解

厚労省のフッ化物応用の総合的研究班(2006年)が見解を示しました。

 1,フッ化物配合歯磨剤の新しい考え方

厚労省:フッ化物応用の総合的研究班(2006年)の見解1.

  • フッ化物配合歯磨剤を「ブラッシングの補助剤」から「積極的な予防剤」への認識の変化。
  • フッ化物配合歯磨剤を使用しない歯ブラシだけの口腔清掃(カラ磨き)のう蝕予防効果はほとんど認められない。
  • 使用開始年齢を「うがいのできる3~4歳頃でなく、乳歯の萌出直後からとした。
  • 使用時期は、生涯を通して歯がある限り、乳幼児期から高齢期までとした。


2,新しい応用法(使用方法の提示)

厚労省:フッ化物応用の総合的研究班(2006年)の見解2.

  • 年齢に応じたフッ素濃度と歯磨剤の使用量を提示。
  •  推奨される効果的な使用方法の提示。
  • カリエスリスク(う蝕へのかかりやすさ)に応じたフッ化物の種類を解説。
  • う蝕予防が明確に期待できるフッ素配合歯磨剤におけるフッ化物イオン濃度を提示。


フッ化物配合歯磨剤の種類

 3-1,フッ化物配合歯磨剤の種類

フッ化物の種類による分類
①フッ化ナトリウム
②モノフルオロリン酸ナトリウム
③フッ化第一スズ

剤形による分類
①ペースト状
②フォーム状(泡状)
③ジェル状
④液状(洗口液、スプレー) 


フッ化ナトリウム(NaF)の特徴

3-2,フッ化ナトリウム(NaF)の特徴

  • 素早く歯の表層で反応してう蝕予防効果を発揮するが深層への浸透性が低い。
  • 歯のCaと反応し、弱結合性のフッ化カルシウム様の物質形成しフッ化物イオンを徐放する。
  • 歯垢中のフッ化物濃度を高める作用がモノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)より高い。

モノフルオロリン酸ナトリウムの特徴

3-3,モノフルオロリン酸ナトリウムの特徴

  • 歯の表面のハイドロキシアパタイトに対する反応性低く、フッ化カルシウムをほとんど形成しないため、NaFよりも歯の深層へ浸透する。
  • フッ化ナトリウムよりも毒性低い。(1/3~1/2程度)
  • NaFよりも歯や歯垢への残留性が劣る。


3-4,フッ化第一スズの特徴

  • スズイオンによる抗菌作用
  • 歯垢の形成や付着抑制作用
  • 優れた抗菌作用があるため、う蝕だけでなく歯周病予防にも効果ある。
  • 唾液中の硫黄とスズイオンが反応し、ステイン(歯面の着色)がつくことがある。
    →歯のクリーニングで除去可能。
  • スズは環境ホルモンの1つといわれている


市場製品の現状

濃度については、薬事法にかかる承認基準でフッ化物イオン濃度(フッ素濃度)は、1000ppm以下に定められています。(次項の4-1、4-2参照)

形状の特徴としては、ペースト状はフッ化物イオン濃度が950ppmのものが多いものの、こども用に500ppm以下のものもあります。

ジェル状は、歯面付着物(着色)の除去効果よりもフッ化物の応用を主とした製剤で、中には歯磨き後に歯ブラシで歯面に塗布することを推奨しているものもあります。

フォーム状は、ほとんどが空気による泡のため体積でみるとペースト状よりフッ化物量が少なくなるため、吐き出しのできない低年齢児への応用に適しています。(4-3参照)

スプレータイプは、100ppmとフッ化物イオン濃度が低いため低年齢児の応用に適していますが、500ppm未満のフッ化物配合歯磨剤では全く効果が無いわけではないのですが、う蝕予防の有効性が明らかにされていないため、歯の生え始めの6ヶ月から1歳6ヶ月くらいでの初めて歯磨剤を使用する際の導入補助としての役目が主となっています。

4-1,フッ化物配合歯磨剤(一般販売)
フッ化ナトリウム配合→歯面の表層でのフッ素の定着性に優れる


ライオン こども歯磨き

ライオン
こども歯磨き
濃度非公開

キシリデント ライオン クリニカ

キシリデント
ライオン クリニカ
950PPM

花王 クリアクリーン

花王
クリアクリーン
濃度非公開

サンスター DO

サンスター
DO
500PPM
950PPMの2タイプ

グラクソスミスクライン アクアフレッシュ

グラクソスミスクライン
アクアフレッシュ
濃度非公開

ゾンネボード レノビーゴ

ゾンネボード
レノビーゴ
100PPM

ピジョンジェル

ピジョンジェル
100PPM(6ヶ月~)
500PPM(1歳6ヶ月~)の2タイプ



モノフルオロリン酸ナトリム配合→歯の深層への浸透性に優れる

サンスターガム

サンスターガム
濃度非公開



上記の両方を配合(成人用)
歯面表層への定着の良いフッ化ナトリウムと歯の深層への浸透性に優れるモノフルオロリン酸ナトリムの両方が配合されているがフッ素の濃度が非公開なのが残念

花王 クリアクリーン プラス

花王
クリアクリーン
プラス
濃度非公開



フッ化第一スズ 一般販売品には無い

歯がある程度でてきたら500PPM以上のフッ素濃度の歯磨剤でないとフッ素の明確なむし歯予防効果は期待できません。


4-2,フッ化物配合歯磨剤(歯科専売品)
フッ化ナトリウム配合→歯面の表層でのフッ素の定着性に優れる

ライオン チェックアップ ペースト・ジェル・フォームジェル

ライオン
チェックアップ
ペースト・ジェル・フォームジェル
500PPMと950PPM
ペースト 950PPM

サンスター バトラー・C&F 乳児用ジェル

サンスター
バトラー・C&F
乳児用ジェル 150PPM
ペースト 500PPM

GC プロスペック・コドモはみがき ペースト

GC
プロスペック・コドモはみがき
ペースト 900PPM

ゾンネボード レノビーゴ

ゾンネボード
レノビーゴ
100PPM

※レノビーゴは、乳児から使用できることを10年以上前からメーカが謳っている。

ビーブランド ジェル

ビーブランド
ジェル 100PPM
ペースト 900PPM


モノフルオロリン酸ナトリム配合→歯の深層への浸透性に優れる

サンスター プロクト

サンスター
プロクト
925PPM



上記の両方を配合している→歯科専売品無い


フッ化第一スズ
オーラルケア ホームジェル

オーラルケア
ホームジェル
970PPM

白水貿易 (パスカル) スタンガードジェル

白水貿易
(パスカル)
スタンガードジェル
970PPM


歯科医院で専売されている製品は、どの歯磨剤もフッ素濃度が製品のラベルに表示されています!

フッ化物配合歯磨剤の年齢別使用量

5-1,フッ化物配合歯磨剤の年齢別応用量

年齢使用量フッ素濃度注意事項
6ヶ月~2歳切った爪程度少量

500ppm
泡状なら1000ppm

仕上げ磨きに保護者が行う
3~5歳5mm以下

500ppm泡状なら1000ppm
MFPなら1000ppm

就寝前が効果的
約10mlの水で1回洗口

6~14歳1cm程度1000ppm同上
15歳以上2cm程度1000ppm
同上

すべての年齢において1日2回以上を推奨

フォーム状の歯磨剤

5-2,
低年齢児(2歳児まで)への使用法 フォームタイプ

フォーム状の歯磨剤:1日3回

(NaF:950 ppm)

フォーム状歯磨剤は、ほとんどが空気なので小児用ブラシへつけても、フッ素量は少なく、0.114~0.228mg程度である。


乳切歯のみ萌出

乳切歯のみ萌出
0.04g 毛先1/3

乳犬歯と第一乳臼歯萌出

乳犬歯と第一乳臼歯萌出
0.06g 毛先半分

すべての乳歯が萌出

すべての乳歯が萌出
0.08g 毛全体

5-3,3歳~5歳児への使用法 (ペーストタイプの場合)

  • 500ppmのNaF歯磨剤
    ※小児用歯ブラシの約半分の長さ(5mm以下)
    1000ppmのMFP歯磨剤⇒えんどう豆大(0.25g)
    ※小児用歯ブラシの約半分の長さ(5mm以下)
    ※MFPで1000ppmとあるのはMFPはNaFの1/2の毒性であるため。
  • 950ppmのフォーム状歯磨剤なら、歯ブラシ全体につけて可
  • 洗口は軽く1回
  • 使用回数 1日2回以上(就寝前が効果的)

5-4,6歳児以上への使用法

  • 1000ppmの歯磨剤を小児用歯ブラシの刷毛部長さ1/2以上(1cm程度:0.25~0.5g※)
    ※大人用歯ブラシの1/2の量
  • 洗口は軽く1回
  • 使用回数 1日2回以上(就寝前が効果的)

6-1,推奨される効果的な使用法

  1. 年齢に応じて歯磨剤の使用量を調節
  2. みがく前に歯磨剤を歯面全体へ広げる
  3. 2~3分間歯磨剤による泡立ちを保つような歯磨きをする(ブラッシング法にこだわらない)
  4. 歯磨剤を吐き出す。
  5. 10~15mlの水を含む
  6. 5秒間のブクブクうがいをする
  7. 洗口は1回のみとし、吐き出したあとはうがいしない
  8. その後1~2時間は飲食をしない
  9. 1日2~3回行うことが望ましい

6-2,イエテボリ・テクニックの紹介 Brikhed et al.,Caries Res,1995
イエテボリ・テクニック

  1. 歯ブラシに2cmの歯磨剤をつける
  2. 歯磨剤を歯面全体に広げる
  3. 2分間ブラッシングする(特にブラッシングにこだわらない)
  4. 歯磨剤による泡立ちを保つ
  5. 歯磨剤を吐き出さずに5~10mlの水を含む
  6. 30秒間そのまま洗口する
  7.  吐き出したあと、うがいをしない
  8. その後は2時間飲食をしない※1000ppmのFを5mlで希釈するとF濃度は計算上200ppmとなる

患者さんのライフスタイル沿った使用方法を提案するために

フッ化物配合歯磨剤のう蝕予防効果は、フッ化物イオン濃度に依存しているので、1000ppm以上の濃度では500ppm高くなるごとに6%のう蝕予防効果の上昇があるといわれています。

反対に500ppm未満のものは、明確なう蝕予防効果は、認めれていません。

したがって、フッ化物配合歯磨剤を併用しないブラッシング(カラ磨き)もう蝕予防効果はほとんど認められていません。

このことから、フッ化物配合歯磨剤の使用開始年齢は、うがいのできる3~4歳ではなく、乳歯の萌出直後からと厚労省の見解が改正されました。また、他のフッ化物応用(フッ素洗口、歯科医院でのフッ素の歯面塗布法)との併用も可能です。

ただし、年齢に応じたフッ化物濃度と応用量を守って使用してもらうことが重要です。

歯科医師や歯科衛生士は、厳密な使用方法で患者さんへ歯磨剤の使用を勧めることは長続きせずあまり現実的でないことをよく知っています。

医学的な見解を充分に理解したうえで、生活スタイルに合う無理のない歯磨剤の使用について患者さんへ提案するように心がけたいと考えています。